本研究期間では、小・中学生サッカー選手を対象として、各自の成熟度を、暦年齢・身長・体重・座高・脚長を変数として算出するMaturity Offset法に基づいて評価し(以下MO値)、各種体力要素(40m走、10m×5走、バウンディング)の横断的変化との関係を検討した。 その結果、重回帰分析においてMO値は小学生・中学生両群で40m走(-0.606、-0.621)、10m×5走(-0.421、-0.638)、5段跳び(0.287、0.324)の説明変数として組み込まれ、40m走が反映するスピード能力は生物学的成熟の遅速が小、中学生ともに大きく影響することが示唆された。また10m×5走が示すアジリティー能力は、小学生年代では成熟度の遅速の影響は少ないものの、中学生年代になると、その影響が増大する可能性が示唆された。これは中学生年代になり、成熟が促進することで得られるスピードの向上が、アジリティーの主要な説明因子となることが影響しているものと推察される。一方MO値別に体力要素の横断的変化をみると、10m×5走はPHVA前に、5段跳びはPHVA前後に、そして40m走はPHVA前から後にかけて広範に変化することが示され、これまでの縦断的な先行研究結果と同様の傾向が示された。 一方MO値はPHVAが早く出現し、測定時にほぼ生物学的に成熟している児童の場合には、成長段階を過小評価する可能性があることが示唆されたが、体力要素の変化と成長段階の関係を反映していることが示され、個人の身長増加の実測値とあわせてMO値を用いることで、成長段階を見誤ることなく、成熟度や体力要素の発達を評価できる可能性が示唆された。
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