□研究の目的 これまで球技系アスリートのタレント議別指標として形態やスピードが挙げられている。ただし成長期の形態やスピードの優劣には個人の成熟の遅速が強く影響する。従って成長期に上記二要素を評価する際、成熟度も考慮しなければ個人の能力の適切な評価ができない。この評価を行うためには、スポーツ現場で活用できる簡便な成熟度評価指標の確立が急務である。そこで本研究は以下の2点について検討することを目的とした。 1) 身長、体重、座高を用いた成熟度評価法(Maturity Offset法:MO法)と骨年齢の関係から、MO法の妥当性を検討 2) 成熟を考慮した際の運動能力が、ジュニア球技系選手の選抜評価に影響することを検討 □対象・測定項目 小学6年生サッカー選手63名(平均年齢12.2±0.3歳)を対象とし、形態測定(身長、体重、座高)、MO値、骨年齢(TW2法のRUSスコア)、運動能力(40m走、5段とび)を測定した。MO値とRUSスコアの相関はピアソン相関分析で検討した。また、63名を競技レベルの高い選抜群15名と、非選抜群48名に二分し、各パラメータの平均値を成熟度(骨年齢-暦年齢)を共変数とした共分散分析で比較した。 □結果・考察 MO値とRUSスコア間にはr=0.78(p<0.001)と強い相関が認められた。また選抜群は非選抜群よりも有意に優れた40m走タイムを有することから、成熟の影響を考慮した条件下でも、スピードはジュニア年代の短期的なキャリアに強く影響することが明らかとなった。今後スピードのように選手選抜結果に強く影響する運動能力を評価する際には、成熟度を考慮することで、晩熟であるために能力が劣っていると評価される選手を見過すことなく、より適切な評価が行えるものと推察される。その際にMO法は、スポーツ現場で簡便に行う成熟度評価法として、ある程度妥当性のある指標であると考えられた。
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