研究概要 |
一般に「筋肉痛」と呼ばれる遅発性筋痛(DOMS)は,運動後1日〜3日後にピークに達する筋痛を指し,伸張性収縮筋活動後に生じる.その原因のひとつに,伸張性収縮筋活動は等尺性収縮や短縮性収縮と比較して活動する筋線維数が少ないためである.主運動時の筋線維動員はウォーミングアップ(W-up)によって変化する.したがって,伸張性収縮筋活動前のW-upは筋線維動員形態を変化させ,DOMSの緩和につながる可能性がある.そこで,本研究ではW-upがDOMS軽減につながることを実験的に検討した. 本研究では健康な男子大学生8名を対象として実験を行った.実験はW-upを行ってから伸張性収縮筋活動を行う条件(WU)と,W-upを行わずに伸張性収縮を行う条件(NW)の2条件であった.全ての被験者は方腕ずつ両条件を行った.WU条件は肘関節屈曲伸展運動によってW-upを行い,その後上腕二頭筋の伸張性収縮筋活動を行うことでDOMSを発生させた.NW条件は一切のW-upを行わずにWU条件と同負荷の伸張性収縮筋活動を行ってDOMSを生じさせた.両条件共に伸張性収縮筋活動時に上腕二頭筋より筋電図を導出し,積分筋電図(iEMG)を算出することで筋の活動状態を把握した.また,実験前と伸張性収縮運動直後,1日後〜5日後まで毎日DOMSの指標として等尺性肘屈曲最大筋力,肘屈曲角,肘伸展角,圧痛を測定した. 結果として,上腕二頭筋の筋温はW-upによって有意に上昇した(WU>NW,p<0.001).しかし,W-up効果が十分に得られる筋温と比べると低い温度であった.また,伸張性収縮筋活動中のiEMGやDOMSの指標については条件間に有意な差が認められなかった.本研究でのW-upは準備運動として行われているW-upと比較しても強度の底いものであったため,今後はW-upの内容を変えて実験を行う必要がある.
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