研究概要 |
本研究の目的は,子どものレジリエンス(resilience)向上に及ぼすスポーツ活動の効果を理論的,実践的に検討することであった.そのため,本年度は国内外のレジリエンスに関する文献研究を行った.具体的な研究目的としては,レジリエンスに関する国内外の論文,著書をレビューすることにより,子どものレジリエンス研究における現状と課題,そして子どものレジリエンス向上にスポーツ活動が貢献できる可能性を探ることであった.検討の結果,以下の内容が導かれた. (1)レジリエンスは,Masten ら(1990)によって,「挑戦的で脅威的な状況にもかかわらず,うまく適応する過程,能力および結果である」と定義されている.この概念の特徴としては,個人が極度の困難や脅威を感じていること,そして個人の適応や発達の質が良好であることなどが指摘された.(2)レジリエンスを構成する要素としては,個人的要素と環境的要素とが考えられ,これら両方の側面から検討することの重要性が考えられた.(3)レジリエンスの研究は,従来は虐待,災害など特別な体験からの回復ということに焦点があったが,今後は多くの個人が体験するような出来事を対象とした研究の必要性も指摘された.(4)運動部活動におけるストレスの体験から,部員は自己成長力を高めている可能性が考えられた.これらのことを受け,レジリエンスの向上に及ぼすスポーツ活動の効果を検討する本研究が取り組む課題として,以下のことが指摘された.(1)現代における適応上の問題とレジリエンスとの関係を検討する.(2)スポーツ活動によって高められるレジリエンスの要素を検討する.(3)スポーツ活動を通じた個人のレジリエンスを向上させる取り組みを実施する.
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