研究概要 |
本研究は,有限要素法を用いたコンピュータシミュレーションとin vivo実験とを併用することで,実験的な計測が困難であるヒト骨格筋の運動やトレーニング時の局所応力・局所変形の状況を明らかにし,これらのスポーツ障害との関連性,ならびに,その後に生じる適応による筋形状や筋機能の変化との関連を検討することを目的としている.当該年度においては,初年度より開発を行ってきた1)筋線維が収縮ダイナミクスに従う内力(筋張力)を発揮し,2)筋内に線維性の組織の3次元配置をもつ,変形・応力解析の可能な骨格筋有限要素モデルについて国内外での発表を行った.開発に伴い必要なin vivo実験パラメータについては,MR,超音波等の高機能医療機器を用いて人体から計測し実装した.また,昨年度実用化したPhase contrast MRを用いて収縮に伴う組織の変形を高空間分解能で計測する技術を発展させ,これまで報告が少ない筋,腱の運動時局所変形を詳細に実測し,国内外で発表を行った.これらは実験データとしても優れたものであるが,この新技術による実験データをシミュレーションに併用することで,有限要素シミュレーションによる解析も更に精度・信頼性の高いものとなりつつある.研究の進捗の中で,実験・シミュレーションの両分野共にスポーツ障害に関する多くの示唆を得ることができており,今後も研究の大きな発展が期待できる.本研究で得られた成果はいずれも,これまでの実験計測,あるいは数値解析のみを主体とした方法論では得ることが非常に困難であった知見がほとんどであることを強調しておく.
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