筋核小体増加中に発現が増大する因子として、骨格筋肥大時における27kDa heat shock protein(HSP27)のリン酸化動態変化を追究した。ウィスターハノーバー雄ラット(14週齢、n=25)をコントロール群(n=15、うち実験前群n=5)と後肢懸垂群(n=10)に分け、後肢懸垂群には7日間の尾部懸垂を実施した。懸垂群のうち半分(n=5)のラットは、懸垂終了後に懸垂を解除し5日間床上で回復させた。実験前または懸垂終了時、回復5日後にそれぞれの群からヒラメ筋のサンプリングを行った(各時点n=5)。これらの摘出筋をホモジナイズし、可溶分画および不溶分画に分け採取した。ウェスタンブロット解析の結果、筋肥大中のヒラメ筋では核や筋原線維タンパク質を多く含む不溶分画においてリン酸化HSP27の発現が顕著に増大していた。そこで、このHSP27が肥大中にリン酸化を受けることによりどのような機能を果たすのか検討するために、可溶分画を用いてHSP27またはリン酸化HSP27特異的抗体による免疫沈降を行った。沈降産物を2次元電気泳動し、出現したスポットは切り出し、質量分析した。その結果、HSP27は通常大きなオリゴマーで存在していると考えられるが、リン酸化された場合分子複合体の大きさは小さくなり不溶分画へ移行することが明らかになった。また、HSP27の共沈タンパク質としてミオシン軽鎖が同定され、肥大中の筋において共沈が増大していた。以上の結果は、リン酸化HSP27が筋原線維構築に関与するという示唆を与えるものであった。
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