絶食を施したカルニチン欠損JVSマウスに、カルニチンの腹腔内1回投与を行うと、血中や組織におけるカルニチンレベルが元の低いレベルに復した後も脂肪酸代謝は亢進を示した。エネルギー産生の増加は、自発行動量および酸素摂取量を増加させる要因の一つと考えられるが、そのメカニズムは不明であるので詳細について検討した。平成19年度は、とくに脂肪酸代謝の評価方法について検討を加えた。JVSマウスにおいて、カルニチンの自発行動量および酸素摂取量に対する持続的投与効果が認められる期間に、脂肪酸代謝の指標と考えられる血中の遊離脂肪酸(FFA)レベルを測定した結果、カルニチン投与群と生食投与対照群の間に有意な差は認められなかった。しかしながら、14C-palmitateを尾静脈投与して呼気中から回収される14C-CO_2発生量を測定したところ、カルニチン投与を行った全てのJVSマウスの14C-CO_2発生量は、生食投与対照マウスの発生量を上回った。長時間における絶食下では、血中FFAの個体差は大きい。絶食したJVSマウスでは、epididymis重量と肝臓重量および肝臓トリグリセリド含量、肝臓重量および肝臓トリグリセリド含量と血中FFAは正の相関を示した。すなわち血中FFAの変動は、体全体の脂肪含量に由来している。しかしながら、血中FFAと14C-CO_2発生量は相関を示さなかった。以上の結果より、14C-palmitateは血中FFAのみだけではなく、組織トリグリセリドまたは脂肪酸によって希釈されると考えられるので、in vivoでの絶食のような条件下における脂肪酸代謝の評価について、呼気中14C-CO_2発生量をその指標とすることは妥当と考える。
|