カルニチンの細胞膜輸送体OCTN2の欠損により、全身的にカルニチンを欠損するモデル動物、JVSマウスを用いて、カルニチンが脂肪酸代謝によるエネルギー産生・獲得におよぼす影響と特徴について、より明確に示すことを目的とした。JVSマウスは、餌を抜くこと(絶食)によって、暗期活動期における自発行動量と酸素摂取量が、野生型およびヘテロ接合体マウスと比較して激減する。その絶食JVSマウスにカルニチンを腹腔内に1回投与すると、血中や組織におけるカルニチンレベルが数時間後に元の低いレベルに復した後も、エネルギー源としての脂肪の利用亢進は続き、自発行動量と酸素摂取量は少なくとも2日間は増加を示す。自発行動量および酸素摂取量の持続的な増加の要因と考えるエネルギー産生の亢進について、交感神経系のエネルギー・センサーであるAMPKinaseの上流にあるレプチンについて検討したところ、カルニチン投与後に血中レプチンレベルは増加を示した。次に、AMP Kinaseについて測定を試みたところ、タンパク質レベルでの変化は認められなかった。その下流に位置するacetyl-CoA carboxylase(ACC)とともに、それらのリン酸化レベルは今のところ不明である。ミトコンドリア膜での存在を認めるfatty acid translocaseであるFATICD36について、カルニチンの持続的投与効果の認められる期間における変化を検討したところ、タンパク質レベルでの変化は示されなかった。
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