研究概要 |
本研究目的は筋再生過程に伴う毛細血管の形成過程およびミトコンドリアの増殖過程を明らかにすることである。平成19年度は、筋繊維と毛細血管が形成される過程およびそれに関わる遺伝子の発現パターンを明らかにした。筋損傷1-3日後に血管内皮細胞の急激な増殖が見られ、同時に血管新生制御因子であるVEGFやangiopoietin-1, angiopoietin-2とその受容体(Flt-1, KDRIFIk-1, Tie-2)の発現増強が見られた。また、サテライト細胞の増殖及び再生筋繊維の形成、筋分化制御因子であるMyoD、myogeninの発現増強が見られた。しかしながらこの時点では、筋繊維周囲に毛細血管はほとんど形成されておらず、筋繊維周囲に毛細血管が回復するのは筋損傷28日後であった。平成20年度は、ミトコンドリアの増殖過程およびそれに関わる遺伝子の発現パターンを検討した。ミトコンドリア酵素であるクエン酸シンターゼの活性は筋損傷10日目にほぼ正常にまで回復し、筋繊維再生時期とよく一致した。また、筋損傷1-5日後ミトコンドリアDNAの複製に関わるmtTFAとmtSSB、ミトコンドリア酵素遺伝子の発現制御するNRF-1とNRF-2、ミトコンドリア発生に関わるPGC-1□とPRC、ミトコンドリアの分裂・融合を制御するfission 1とmitofusion-2の発現増強が見られた。これらの結果から、筋分化制御因子、血管新生制御因子、ミトコンドリアの増殖に関わる因子の発現増強は筋再生初期に見られるものの、ミトコンドリアの増殖は毛細血管の回復よりも早期に起きる可能性が示唆された。
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