研究概要 |
【研究課題の背景および目的】骨格筋収縮時に活動筋組織の内部には筋内圧が生じている。この圧力刺激の作用については筋芽細胞において代謝の活性化が生じること以外ほとんどが未解明であり,本研究課題はこの圧力という機械的刺激の骨格筋細胞への影響を生化学的に検討するものである。本年度はこれまでの本課題の検討で得られた「筋細胞の成熟(分化)に対する圧力刺激の抑制作用」をもたらすメカニズムを検討する。さらに,成果公表を進める。【方法】骨格筋細胞は培養骨格筋筋芽細胞L6を用いた。細胞への圧力は160mmHgの定常圧力を1日に3時間,4日間連続負荷した。これにより筋芽細胞から筋管細胞への早期の分化過程への影響を検討した。細胞内での蛋白質発現解析にはImmunoblotting法を用い,細胞外への蛋白質放出量測定にはELISA法を用いた。【本年度の研究結果】(1)メカニズム解明の試み:autocrine/paracrineによる圧力刺激の影響を検討するため細胞外へのIL-6,TNF-α,IGF-1蛋白質の分泌量を測定した。いずれのサイトカインにも圧力刺激による変化はみられなかった。(2)細胞増殖反応の検討:筋細胞の分化抑制が細胞増殖の亢進によってもたらされているかどうかについて検討した。細胞増殖応答を亢進する細胞内タンパク質であるERKは圧力刺激によって活性化しているものの;他の蛋白質発現解析などはそれと一致する結果とはならなかった。【考察および総括】筋芽細胞の筋管細胞への分化過程における圧力刺激は細胞融合反応を阻害するが,その作用にIL-6,TNF-α,IGF-1というこれまでに筋肥大や筋細胞の増殖に関連する因子が減少することで生じている可能性が否定された。圧力刺激の作用についてはたぶんに未解明部分があり,今後の更なる検討を要するものと考えられた。
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