先行研究において我々は、横方向動体視力(DVA)と非優位眼の水平方向眼球運動量が有意に相関すること、スポーツビジョンに眼優位性が影響する可能性を示した。昨年度は健康ボランティア24名を被験者とし、眼優位性とスポーツビジョン8項目の検査及び近見反応との関連を検討した。眼優位性の定量化には北里式眼優位性定量チャートを用い、近見反応の計測にはトライイリス(浜松フォトニクス)を用いた。結果、眼優位性が強い程、優位眼の水平方向の眼球運動量が小さくなる傾向が認められた。これらの研究成果を背景に、今年度は、主観的な報告に基づくDVAと、実際の横方向の眼球運動の関係を定量的に明らかにすることを目的として、DVA測定時の眼球運動を同時計測することを試みた。眼球運動計測には、精密眼球運動測定装置であるEye Link1000(SR research社 ; カナダ)をDVA測定装置(HI-10 ; Kowa社)に取り付けて用いた。現在までに29名の被験者から測定を行い、Matlabを使った解析用ソフトを自作して定量的な解析を行った。横方向に移動するランドルト環と視線位置の間の相対距離と相対速度の2次元プロットを用いた解析を行い、眼優位性の強い被験者の測定結果の解析から、優位眼と非優位眼の眼球運動に有意な差を認めた。動体視力を、眼球運動の計測によって定量的に解析できたことにより、今後、この定量的解析法を用いて、動体視力の客観的な評価法が確立できる可能性が開けた。現在、近見反応や眼優位性との関連も含め、さらにデータの解析をすすめている。
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