研究概要 |
従来、近赤外分光法を用いて、運動後の回復時間から筋有酸素能を評価するためには、測定対象者に最大全身運動を行わせる必要があり、多大な身体的負荷を課すことになる。このため、高齢者や有疾患者などの大きな身体的負担を課すことの出来ない測定対象者の骨格筋有酸素能を評価することは困難である。そこで、本年度では、身体的負担の少ない骨格筋有酸素能評価の方法を確立するために、全身運動である自転車運動より身体負担が少ない局所運動である膝伸展運動を用いて、最大努力動的膝伸展運動(大筋群を用いた局所運動)後の外側広筋部の最大酸素消費量と酸素化ヘモグロビン回復時間との関係を明らかにすることを目的とした。 健常成人男性6名が0.4kpから0.2kpずつ負荷が漸増する多段階漸増負荷動的膝伸展運動を疲労困憊になるまで行った。運動頻度は1秒に1回であった。各負荷での運動時間は3分間であり、続いて3分間の休息期間が設けられた。動的膝伸展運動時には、酸素摂取量(VO_2)と近赤外分光法装置を用いて外側広筋部の筋酸素消費量(mVO_2)および酸素化ヘモグロビンの1/2回復時間(T1/2reoxy)が測定された。mVO_2、T1/2reoxyともに安静時の値に対する相対値で表した。 VO_2peak、 mVO2は、それぞれ1320.4±327.6ml/min、15.06±4.93であった。T1/2reoxyの最大値は2.25±0.58であった。VO_2peakとmVO_2peakの間には、正の相関傾向がみられた(r=0.732,p=0.09)。さらに、VO_2peakとT1/2reoxy(r=0.795,p<0.05)およびmVO_2peakとT1/2reoxy(r=-966,p<0.01)との間にそれぞれ有意な負の相関関係が認められた。以上のことから、最大努力動的膝伸展運動後のT1/2reoxyが速いほど、VO_2peakおよびmVO_2peakが高くなることが示唆された。つまり、身体負担の少ない局所運動である動的膝伸展運動後の酸素化ヘモグロビン回復時間で骨格筋有酸素能を評価することが可能であることが明らかになった。
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