骨量低下の誘因は多因子であると考え、遺伝的素因と運動・栄養素因の解析を行うことにより対象者に効果的な指導法を開発することを目的とした。インフォームドコンセントにより同意の得られた閉経前後の女性約120名より日常運動を行っている協力者と行っていない協力者から口腔粘膜および血液を採取し、常法にてDNAを抽出した。同時に骨量をAOS-100(QUS法)を用いて測定し、各種身体計測を行った。また、運動・食事・サプリメント・治療薬・既往歴・生活習慣(喫煙等)などを調査し、採血の同意が得られた協力者には骨代謝マーカーやエストラジオール等を測定した。採取されたサンプルやその他の個人情報は、全て匿名化・保存作業を行い、問診・測定値をデータベース化した。遺伝子解析については骨代謝に関連するSNPを含む配列に対して多型を同定した。これらを素因ごとにSPSSを用いて各パラメータ間で多変量解析を行った. エストロゲンレセプターα(ERα)遺伝子多型9型の出現頻度はこれまでの報告と有意差はなく同程度であった。多型間の骨量は有意差が無く、全体として運動習慣があるグループは有意に高値であった。各素因について解析すると、閉経前女性においてERα多型のうち身体活動(エネルギー消費量)・体重・BMIに骨量と正の相関を示す多型と、他の型と比較して運動強度に対する骨応答性が低く、砂糖類摂取量に骨量と負の相関を示す多型を見出した。また、小魚摂取量と強い正の相関を示す多型も見出した。これらの結果より骨量におけるERα多型といくつかの栄養素摂取や身体活動の関連性や相互作用が示された。以上の骨量に影響を与える複数の多型や、運動・栄養の因子について一部を学会へ発表した。骨粗霧症予防を目的とした個々人のスポーツ栄養指導に寄与するものとしてさらに検証を行っていく。
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