研究概要 |
高齢者の要介護化に陥る大きな要因のひとつとして挙げられる,「老年症候群」を予防するためには,高齢期の筋力トレーニングは不可欠である。本研究は,筋肉への血液供給を強制的に少なくした状態で低負荷のトレーニングを行う「加圧筋力トレーニング」の明確な基礎カニズムとその機序を実験系において解明することにより,高齢者に安全で効果的な筋力トレーニング法を科学的に開発することを目的とした。 本研究では当初,「加圧筋力トレーニング」のin vitroモデルとして,筋細胞(筋サテライトセル,C2C12myoblast)に対して低酸素刺激と機械的刺激を与え,遺伝子レベルで解析,検証していくことを目指したが,研究過程において,「低酸素刺激」のみ与えることによっても筋萎縮予防効果があったとの知見が得られたことによって,まず,「低酸素刺激」が筋組織に与える影響をin vivo,in vitroにて検証した。in vivoにおいては,(1)マウスの下肢懸垂筋萎縮モデルを用いて,片側下肢を一過性の虚血状態にすることによって「低酸素刺激」の筋萎縮抑制効果を検討するモデルを作成した。今後,関連遺伝子を検討し,高齢者に安全で効果的なトレーニング法を開発する。また,in vitroにおいては,(2)筋管細胞(C2C12myotube)に対する「低酸素刺激」の効果として,筋肥大をもたらすといわれるカルシニューリン系の関与も含めて今後検討する。
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