研究概要 |
本研究は, アスリートの健康情報活用能力(健康リテラシー)とコンディショニングの実施能力の関係を明らかにすることである. そのために, アスリートの健康リテラシーを縦断的に評価し, アスリートが個々に取り組んでいるコンディショニングの実施記録を分析し, 健康リテラシーのレベル変化がコンディショニングの実施内容に影響があるかを検討した. 本年度は, 過去に開発した健康リテラシーの評価を用いて, 国内上位レベルの大学ソフトボール選手に研究協力を依頼し, 健康リテラシーの評価を継続して行った. また個々人のコンディション指標を記録し, それぞれとコンディションの成果(成功と失敗)また健康リテラシーとの相互関係の分析を行った. その結果, 競技のレベルが高いほど健康リテラシーの「健康情報の伝達」「トレーニングの自己調整」「自己情報の処理」の因子で明らかな高得点を示したが, コンディションの各要因との共変関係を見出すことは困難だった. 事例ではあるが, 競技レベルが高い選手ほど健康リテラシーの因子得点は高く推移し個々人のコンディションを客観的に捉えているようではあるが, 目標大会でコンディショニングが十分成功しなかった場合に, たとえ競技成績がよくてもその後に評価した健康リテラシーの因子得点は低下していた. また国際大会の経験やシーズンの大きな目標試合に向けての準備期間などでは, 一次的な混乱や技術や戦術の難しさへの理解から自己のコンディション評価が下がる傾向にあった. 今後は, コンディションの客観的な評価と合わせてコンディションの成果を再評価していく. またコンディショニングは, 自己情報の処理を通じて自己のコンディション調整が行われるため, 健康リテラシーの評価がコンディショニングに役立つ可能性は十分あると考えられ, 次年度以降も継続的にデータを蓄積し分析を進める.
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