本研究の目的は筋収縮様式(伸張性収縮(ECC)および短縮性収縮(CON))特性を利用した高強度(最大挙上重量の80%)の筋力トレーニングが動脈スティッフネス(硬化度)に及ぼす影響を検討することである。30名の健康男性をECCに費やす時間を長くする群(ERT)10名、CONに費やす時間を長くする群(CRT)10名および対照群(SED)10名に分類した。ERT群は筋力トレーニングにおいて負荷を下ろす時間を3秒、負荷を持ち上げる時間を1秒に設定したプロトコールにてトレーニングを実施した。CRT群は筋力トレーニングにおいて負荷を下ろす時間を1秒、負荷を持ち上げる時間を3秒に設定したプロトコールにてトレーニングを実施した。筋力トレーニングは週に2回の頻度で10週間実施した。ERT群の脈波伝播速度はトレーニング前後において変化は認められなかった。対照的にCRT群のトレーニング後の脈波伝播速度はトレーニング前と比較して有意に増加した。一方、ERT群およびCRT群の血管内皮機能はトレーニング前後において変化は認められなかった。以上の結果から、両方のトレーニングが血管内皮機能を悪化させるというわけではないが、ERTによる筋力トレーニングが動脈スティッフネスの増加を抑制することが示唆された。すなわち、高強度の筋力トレーニングにおいても負荷をゆっくり下ろして素早く持ち上げるトレーニング法を実践することによって動脈スティッフネスの増加が抑制されることが明らかになった。なお、本研究の結果は現在論文として投稿中である。
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