研究概要 |
動脈硬化は心筋梗塞や狭心症といった虚血性心疾患および脳卒中を引き起こす要因である。運動やスポーツといった身体活動の定期的な実施や,食習慣の改善といった生活習慣の改善が動脈硬化の進行を予防・改善することが知られている。音楽を楽しむこと(音楽療法)は,精神的なストレスを改善し,比較的安価で,身体的状況にとらわれず誰でも実践できる活動である。中高齢者を対象として,この音楽療法が心身の健康,なかでも動脈硬化指数やそれに影響する因子を改善するか否かについて検討することが本研究の目的である。本研究は,「音楽療法」を動脈硬化予防・改善の手段として捉え,その医学的根拠を提示しようとするものであり,その結果,「音楽療法」の新たな効果を科学的根拠として示すことになり,音楽療法の分野のみならず健康増進分野・予防医学分野の発展に大きく貢献するものと考えられる。中高齢者40名を対象として,3ケ月間(週1回,1回1時間程度)の音楽療法の介入を行い,その前後で,動脈硬化指数を含む心身の健康度を調べた。音楽療法の内容は,1)複式呼吸を心掛けた発声練習,2)歌唱,3)リズム体操,4)簡易楽器を用いたリズム合奏などにより構成した。現段階で得られている主な結果は,1)心理尺度(気分;POMSで評価)の「活気」の上昇,「混乱」の低下,2)認知機能の改善,3)最低血圧の低下,4)LDLコレステロールの低下などであった。本研究は平成20年度も継続して行われており,さらに長期間の介入による効果の検証を行っている。
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