研究概要 |
ストレス/疲労社会の中で、心の健康を適切に管理するためには,日常生活の中で生理信号を用いて心の状態を自動的に評価する技術の開発が必要となる.このために,本研究では,日常生活中の自律神経系生理データと心理データを同時に計測し,これらの間の相関性を明らかにすることを目的とする.今年度は,昨年度に計測した40名の被験者の日常生活中の心拍変動,身体加速度(生活活動度)変動,8種類の気分の変動に関するデータの解析を行った.その結果,睡眠前6時間の△落ち込み感(△は一日目あるいは一晩目からの差を表す)の平均値と睡眠後3時間の△Hfnu(交感神経系活動に対する副交感神経系の活動度の高さを表す心拍変動指標)の平均値との間の相関係数は-0.53(p<0.01)であった.睡眠前6時間の△不安感の平均値と睡眠後3時間の△HFnuの平均値との間の相関係数は-0.44(p<0.01)であった.起きている間の比較では,平均身体加速度が30mG未満の時間帯に限れば,△活気と△心拍数との間の相関係数は0.45(p<0.0001)であり,△活気と△HFnuとの間の相関係数は-0.25(p<0.005)であった.以上の結果から,8種類の気分状態のうち,就寝前の落ち込み感と不安感は就寝後の自律神経系活動バランスを交感神経系優位にシフトさせることが示唆された.さらに,起床時では,8種類の気分状態のうち活気が自律神経系生理指標との間の相関性が最も高いことが示唆された.
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