研究概要 |
近年、睡眠障害の増加やメンタルヘルスの低下が社会問題になっており、自分の睡眠状態やメンタルヘルスを簡易に計測する手法が期待されている。本研究では、睡眠状態を評価する指標として「睡眠の質」に着目し、日常生活における生理信号を統合的に解析することで睡眠の質を定量的に評価するシステムを開発することを目標とした。さらに、開発したシステムをうつ病の早期発見システムへの応用を目指す。 今年度は、(1) 非侵襲ウェアラブル生体信号計測装置(Sense Wear Pro3 Armband, Body Media社)を用い、健常者4名、うつ病患者2名、統合失調症患者1名に対し、日常生活における生理信号(熟流束、皮膚表面温度、皮膚周辺温度、皮膚電気伝導度、加速度)をのべ1400日以上計測した。(2) 自律神経系生理反応の規則性に着目し、メンタルヘルスの低下によって生理反応の規則度が低下すると考え、生理信号の平均値と標準偏差から推定した平常状態と日々の計測データの偏差に基づく「生理反応の規則度)を新たに提案した。入眠直後および起床直後の皮膚電気伝導度、皮膚表面温度、熟流束の規則度を長期計測し、その平均値を健常者・うつ病患者間で比較した結果、75%の割合でうつ病患者の方が健常者よりも優位に規則度が低下していることが明らかになった。(3) 寝返りの頻度が基づく「睡眠の質得点」の長期計測を行った結果、睡眠の質得点の平均値は、健常者よりもうつ病患者の方が優位に低下していることが明らかになった。以上より、睡眠状態に着目した提案指標が、メンタルヘルスの状態を反映することが示唆された。
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