実生活で整容行為が行われる空間は、洗面室限定されてはおらず、居間、食事室、寝室など様々である。また、住宅内の室内照度に関して、生活行為とその行為が行われる室ごとに照度基準範囲が示されているJIS Z9110-1979においては、「髭剃り」行為は浴室/脱衣室、「化粧」行為は浴室/脱衣室・居間・寝室の各室における生活行為とされており、補助照明を含めて200~750lxの平均照度が推奨されている。しかし、本来これらの推奨値は、整容行為が自身の顔を見る作業を伴うことに基づいて決定されるべきであり、行為が行われる空間の設定についても再検討する必要がある。 そこで、外出前に自宅内で行う整容行為として整髪・髭剃り(男性)・化粧(女性)の3種の行為に着目し、行為に要する用品の使用状況、行為が行われる空間の把握などを目的としたアンケート調査を行った。調査結果より、社会人、大学生に関わらず、7割以上の男性が洗面室の鏡を使用し、洗面室で整髪・髭剃りを行っていること、女性社会人の約半数が洗面室の鏡を使用し、洗面室で整髪行為を行っているのに対し、女子大学生の約4割は卓上鏡などを使用して、自室で化粧行為行っていることがわかった。 これらの結果を踏まえ、化粧行為が行われる場所である洗面室において、化粧を行う際に必要となる光量・光色・光の方向・指向性などの照明環境に関する要因を明らかにすることを目的として、洗面台を模した鏡と種々の照明条件が実現可能な照明器具からなる実験装置を製作し、主観評価実験を行った。その結果、化粧行為に関する明視性・作業性は、顔面の明るさに大きく影響を受け、鉛直面照度として800lx程度が必要であること、四方からある一定量以上の照度が得られる光環境が化粧行為には望ましいことが示された。
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