現在、家族を介護している方と、以前介護を行って、既に看取った方を対象として、看取りを行う(行った)中で、ケアすることによる発達が、どのようなプロセスを経て認められるのかを明らかにすることを目的し、研究を遂行している。また身近な他者との死別と死別経験後のこころの発達の関連についても検討している。初年度の平成19年度は、以下の2つを中心に研究を行った。 1.介護肯定感や負担感、ケアにおける性差の扱われ方等、ケアに関する国内外の研究動向を調査し、先行研究の成果とそれらの問題点を整理する理論的検討を行った。その結果、ケア研究の対象者の大部分は女性であり、男性がケアをすることの意味というものが検討されている論文は皆無に等しいということ、ケアを行う際の心理を検討する際に、肯定感のみの視点、反対に負担感のみの視点からの検討では不十分であり、多面的で両価的な側面を包含した視点からの検討が必要であることが明らかになった。 2.上記1の結果をもとに「死別経験による人格的発達」に関する質問紙を作成し、調査を実施した。その結果、身近な他者との死別によって、死別経験後「自己感覚の拡大」「死に対する恐怖」「死への関心」の3側面の変化が認められた。また経験した死別に対して、ショックが大きかった場合に、またこれまでの人生の中で、もっともストレスフルな出来事であると認識していた場合に、死別経験による人格的発達得点が有意に高かった。この調査結果から、死別経験者自身にとって、死別が人生を揺るがすほどの出来事であり、深い落ち込み、哀しみを経験したと認知した場合に、死別経験後、人格的発達といえるポジティブな発達が認められることが示唆された。 以上の結果を踏まえ、平成20年度は、介護者を対象にした面接調査を実施し、質的アプローチを行う予定である。
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