平成20年度は、介護経験や死別経験が、生涯発達的にどのような意味をもつのかということに焦点化し、以下の3つを中心に研究を遂行した。 1. 死別や介護を中心に、喪失経験後のこころの発達に関して、国内外の論文を概観し、その中で喪失経験後のこころの発達がどのような文脈で研究され始め、現在どのように展開されているのかについて、研究動向を示しながら、今後の研究の方向性について考察を加えたレビュー論文を作成した。 2. 死別経験や介護経験は、成人期以降に遭遇するものではなく、年齢を問わず経験する可能性がある。しかしながら、死の外部化により、高齢者介護の現場や看取りの場面に遭遇することは少なくなっている。そのため、学校教育において、いのちの教育を行う必要性があると考えられるが、そのための予備的調査として、大学生を対象に、いのちの教育の経験の有無や必要性について等を調査した。その結果、大学生の多くがその必要性を認めていることが明らかとなった。 3. 死別経験や介護経験が死に対する態度にどのような影響を及ぼすのかに関して、青年期を対象に調査を実施した。その結果、介護経験においては、介護を間近で見ること、また介護に参加することによって、介護について考え、それが死についても考えることにつながり、死をむやみに恐れたり、軽視したりといったことが軽減され、死を他人事ではなく、自己の問題として捉えるようになることが示唆された。また死別経験においては、死別経験の有無ではなく、対象者にとって、その人との死別がどれほど重要なものであったのかといった死別の内容との関連が認められた。
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