看護師を対象に、最適なワークライフバランスを構築するため、仕事や生活スタイルの現状(勤務状況や意識、個人生活と役割)、心理的状態(疲労、ストレス)、職場環境(両立支援に対する理解、支援策運用状況)を把握し、仕事や家庭のストレスと問題解決に向けた支援策の検討と支援策の効果的な導入方法の検討から、具体的なワークライフバランスのとれた支援体制の開発のための基礎的情報の獲得を目的とする。 本年度は、19年度に行った質問紙調査の対象病院について、平均年齢が高いことや在職年数が比較的長いなどの特徴があったことから、ワークライフバランスの均等を在籍年数や家庭状況などの観点から再分析を行った。結果は、在籍年数の違いに関して、仕事や家庭の満足度、両立の度合いなどに差は見られなかったものの、経験が浅い場合は職場のコミュニケーションが十分に図れていない者が多く、患者のことに関する相談や情報交換があまりなされていない傾向にあった。また、技術や能力に不安を抱え、仕事に悩みを持っている者も多く、新卒や中途採用などの在籍年数が浅い看護師には職場におけるサポートの充実が必要であることがわかった。子供の有無に関して、職場のコミュニケーション、仕事の満足度、両立の度合いなどには差が見られなかったものの、子供がいる場合、積極的に学びたいと思う反面、職場での活動に時間をかけられないことや自宅に仕事を持ち帰ることが比較的できない者が多く、新しい看護技術に対して不安を持つ傾向が示された。さらに、部長クラスの看護師を対象に、病院でのワークライフバランスに関する取組みについてヒアリングを行った結果、出産休暇や育児休暇などの両立支援策に加え、ライフイベント(家庭状況や職場経験など)に応じて各看護師が適切なキャリアを創造し、研修や進学制度を設けることなど、職業人生を充実させることが不可欠であることが挙げられた。このことは、リテンションマネジメントにもつながる。つまり、経験に応じた職場の相談体制やキャリア形成など、仕事を継続するための体制づくりもワークライフバランスの均等に重要な役割を果たすことが考えられる。
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