活アサリを水から加熱して調製した熱水抽出液、加熱後の軟体部および加熱前の生軟体部につき、常法によりエキス成分の分析を行った。熱水抽出液100ml中の含量は、全エキス分507mg、グリコーゲン42mg、遊離アミノ酸108mg、核酸関連化合物28μmol、コハク酸8mgであった。遊離アミノ酸はタウリンが総量の約50%を占め、次いでグリシン、グルタミン酸、アラニンの含量が高かった。熱水抽出液への抽出率は、コハク酸91%、遊離アミノ酸84%、核酸関連化合物69%、グリコーゲン37%と分子量の小さい順に抽出率が高かった。 次に、活アサリを-20℃または-40℃で8週間冷凍し、冷凍品について、水からの加熱または沸騰水での加熱の2条件により熱水抽出液を調製し、加熱後のアサリについて、殻の開き方を6段階に分類した。まず、未凍結アサリ(対照)では、2つの加熱条件とも全ての殻が完全に開き、身は片方の殻にまとまっていた。凍結アサリについては、水から加熱したときに殻が閉じたまま、または半開きの状態となるものが多かった。-20℃で4週間以上冷凍したアサリを水から加熱した場合、完全に殻が開いたものは6%に過ぎなかったが、-40℃で冷凍したアサリを水から加熱した場合、完全に殻が開いたものは60%以上であった。しかし、保存期間が長くなるにつれて、完全に殻が開いているものの身が引きちぎられて開殻する割合が高かった。また、凍結アサリを沸騰水で加熱したときは、冷凍温度、冷凍期間に関わらず、完全に殻が開くものが90%以上であった。しかし身が引きちぎられて開殻するものが全体の7〜34%存在した。 以上の結果より、エキス成分の熱水抽出液への溶出しやすさは概ねその分子量に依存すること、殻付き貝の冷凍および解凍に適した条件が明らかとなった。
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