アサリ、ハマグリなどの二枚貝は殻付きの状態で販売され、調理するまで貯蔵される。貯蔵初期には生きており、貯蔵条件の良否によって鮮度変化の様相も異なるものと考えられる。本年度は、活アサリを冷蔵貯蔵したときの鮮度変化を明らかにすることを目的とした。 活アサリを食塩水浸漬群と水切り群の2群に分けて、家庭用冷蔵庫を想定した4℃で9日間貯蔵した。食塩水浸漬群は、試料重量の2.5倍量の3%食塩水に浸漬し、食塩水は毎日交換した。水切り群は、試料を水切りした状態で貯蔵した。両群の試料について、重量、生菌数、遊離アミノ酸量、ATPおよび関連化合物量、コハク酸量を測定した。また臭いについて官能検査を行い、外観の変化と接触刺激に対する反応、加熱による開殻状況を調べた。 貯蔵中に重量は減少し、貯蔵9日目に0日目の85〜93%となった。官能検査より両群とも貯蔵5日目に初期腐敗と判断されたが、冬季(12月)の貯蔵実験では、7日目と遅延した。水切り群の生菌数は3日目以降に増加し、7日目に1.3×10^8であったが、食塩水浸漬群では、貯蔵期間を通じて10^5〜10^6の範囲にあった。遊離アミノ酸総量は、両群とも貯蔵1、2日目に増加する傾向を示したが、食塩水浸漬群では、5日目以降に有意に減少した。ATPおよび関連化合物の構成比は、貯蔵3日目までほとんど変化がなく、両群ともATP、ADP、AMPが総量の約90%を占めていた。また、ATPおよび関連化合物の測定結果から、貝類の鮮度指標K'値は、両群とも貯蔵5および9日目にそれぞれ17%および34%となり、腐敗の進行とともに増加した。食塩水浸漬群のコハク酸は9日目に急激に減少した。水切り群では、7日目以降でも接触刺激に対する反応が30%の個体で認められ、50%以上の個体が加熱により殻を開いた。
|