研究概要 |
本年度は機能性糖鎖として, 食用キノコであるタモギタケ中の精製多糖を用いた。この多糖が免疫担当細胞であるマクロファージを刺激し, TNF-αやIP-10(Interferon inducible protein-10)などのTh1タイプのサイトカインの産生を誘導すること, またその作用が核酸であるグアニル酸(5'-qMP-Na)によって増強, ビタミンとD_2によって抑制されることが昨年までの結果により示されている。本年度はさらに腸管上皮細胞(Caco-2)と単球/マクロファージ(THP-1)との共培養系を用いて,それらの協調作用を調査した。その結果, グアニル酸との協調作用により, 本多糖は腸管上皮細胞の活性を介したマクロファージのTh1型サイトカインの産生能増強効果が認められた。これらの結果より機能性糖鎖はその他食品成分との協調作用によって, 摂食後腸管免疫系の刺激を介した生体内のTh1/rh2バランスの維持をおこなう可能性が示唆された。さらにこれらの成分を含む食用キノコ,ナメコ子実体をBALB/cマウスに一定期間摂食させた後の, 生体内リンパ球の分布とサイトカイン産生パターンを, それぞれ脾T細胞のEACS解析とRT-PCRおよびウエスタンブロット法により測定した。それらの結果, ナメコ摂食マウスではTh1優位の生体内変化がおこることが示された。以上のことより, 機能性糖鎖は食品として摂取された後, それ以外の成分との協調作用により, 生体内免疫系を調節している可能性が示唆された。 ところで,食品は様々な加工・調理を施した上で摂取される。また生体機能は年代によって差異がある。そのため次年度では機能性糖鎖の作用に効果的な加工・調理方法および摂取方法を検討すると共に, 異なる週齢の実験動物を用いて, ライフステージの違いによる糖鎖の免疫調節作用について検討をおこなう。
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