研究概要 |
水分含量が多く凍結損傷が大きい野菜やゲル状食品は、200〜400MPaの高圧力を用いて圧力移動凍結することにより、氷結晶の増大を抑え、冷凍保存による品質の劣化を軽減できたが、卵黄は200〜400MPaで圧力移動凍結しても圧力変性を起こしゲル化するため、冷凍保存による品質の劣化を軽減することができなかった。 本研究では、150MPa以下の圧力での圧力移動凍結(-15℃,150MPa、-10℃、100MPa)を行い、解凍後の卵黄の45℃でのレオロジー(定常流粘性、チクソトロピー性、動的粘弾性)、乳化安定性を測定し、大気圧下の-15C、-10℃圧力容器内凍結と、フリーザー凍結(-20,-30、-80℃)したものと比較した。すなわち冷凍卵黄の品質保持に適した冷凍条件、またショ糖添加による影響について検討した。 冷凍・解凍した卵黄は、冷凍前の未処理の卵黄と比べて粘度が高くなり、チクソトロピー性がなくなり、貯蔵弾性率G'(弾性要素)が増大した。これは特に-20℃フリーザー凍結、-15℃,150MPa圧力移動凍結において顕著に見られた。しかし、-10℃,100MPa圧力移動凍結、-80℃フリーザー凍結で、また、わずか5%のショ糖添加によりこれらの劣化は抑えられた。乳化安定性は、-10℃,100MPa圧力移動凍結ではショ糖無添加でも冷凍前と大差なかった。-15℃,150MPa圧力移動凍結では凍結時間は短く、氷結晶の増大は抑えられたが、圧力が高くなったことで卵黄のタンパク質が変性したものと思われる。-10℃,100MPa圧力移動凍結または-80℃フリーザー凍結が、冷凍卵黄の品質保持に効果的であると言える。
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