研究概要 |
平成21年度は,これまで作成した比較表と文献・資料の整備,及びタイ,インド(ゴア)で現地調査を実施した. 1.ポルトガル由来菓子の比較表の加筆・修正 現存するポルトガル由来菓子について,地域別(日本,タイ,インド,マカオ,マラッカ)に,菓子の名称,伝播した場所・時期,用いられ方(クリスマス)などの各要素に分類し,これまで作成した比較表に加筆・修正をした.特に,ポルトガル菓子の原型をとどめたFios de ovos(鶏卵素麺)について,日本,タイ,インドでの製法の違い,地域内での伝播の仕方など詳細に比較分析をした. 2.現地調査 1)タイ調査:2009年8月6日-8月19日チュソングリチーン村(Santi SUWANNASARI氏)地区に訪問し,パォンデーロー(カステラ)が伝播した菓子の製法について,面接聞き取りおよび観察調査を実施した.さらに,クリスチャンの家庭で,クリスマス伝統菓子について,聞き取り調査をした. 2)インド調査:2009年12月21日~27日大航海時代ポルトガルの植民地であったゴアで,クリスマス伝統菓子について,文献収集およびポルトガル系クリスチャンの家庭(Maria Alig & Jose Jacome Saldanha夫妻)で,観察・ヒヤリング調査を実施した.他の地域に比べ,伝播した菓子の種類が多いが,伝播の仕方がポルトガル系クリスチャンの家庭での母から娘への口伝であるため,限られた空間での浸透であった.また,Fios de ovos由来の菓子の名称が,ポルトガル最古の料理書「Arte Decoziha」でのLetria de ovos(卵の細い麺)と同じ「Letria」であり,古い時代に伝播したことが推察された. 東アジアにおけるポルトガル由来の伝統菓子について,各地域での受容および現地の食文化との融合,発展または消滅の要因について,社会的背景を含め分析・検討した.
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