研究概要 |
アブラナ科植物に特有の辛味成分であるイソチオシアナートは,アミノ酸の共存下においてチオヒダントインに変換される。これまでの研究で,チオヒダントインはアリルイソチオシアナートを含む加工食品中にも存在し,抗変異原性を持つ有用な食品成分であることが明らかになった。チオヒダントインの抗変異原性の強さや作用機構は,アミノ酸の側鎖に由来する部分の構造により異なることが示唆されている。そこで本年度は,食品中に見出されるイソチオシアナートとアミノ酸からさまざまなチオヒダントインを調製し,本化合物の抗変異原性発現メカニズムを化学構造の面から解析することを試みた。 食品中に見出されるイソチオシアナートとして,アリルイソチオシアナート,ダイコンイソチオシアナートおよび3-ブテニルイソチオシアナートを用いて各種アミノ酸と反応させ,チオヒダントインを調製した。これらの構造はいずれも機器分析にて確認した。次に,これらのチオヒダントインの抗変異原性を,サルモネラ菌を用いたエームス試験にて検討した。その結果,芳香族あるいは疎水性の高い脂肪族アミノ酸由来のチオヒダントインに強い抗変異原作用が認められ,以下疎水性の低い脂肪族アミノ酸由来のチオヒダントイン,酸性アミノ酸や塩基性アミノ酸由来のチオヒダントインの順であった。これはイソチオシアナート由来の部分構造が変わっても同様の傾向力現られた。また,イソチオシアナート由来の部分構造も抗変異原性の強さに影響することが示唆された。現在,抗変異原性試験を継続中であると同時に,HPLC分析およびオクタノールを用いる分配係数試験を行って,合成したチオヒダントインの疎水性パラメーターを求め,エームス試験の結果との関連を検証している。抗変異原性作用機構に関する試験は今年度行うことができなかった。
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