非酵素的褐変に関して、昨年度までに加工工程の機能性の変動を詳細に評価したオニオンエキス(タマネギの搾汁液を加熱・濃縮したもの)を用いて、ラジカル消去活性が最も高まった時点における活性本体の分離について検討したが、詳細な特性解明までは至っていない。オニオンエキスを分子量で粗分画した試料のプロアントシアニジンの定性試験においては、それらは陽性を示し、タマネギの搾汁液を加熱・濃縮する時点でタマネギ原料に含まれていたケルセチン類が成分間反応によりプロアントシアニジン様の部分構造を形成することが示唆された。 酵素的褐変に関して、ジャガイモ等のクロロゲン酸類を多く含む農産物素材が、酵素的褐変が起こる温度帯(60~80℃)を急速に通過するような温度履歴を経ると、クロロゲン酸類は減少しないものの異性化が起こることを見出し、クロロゲン酸(5-カフェオイルキナ酸)の加熱による異性化について検討した。クロロゲン酸は純水中、100℃で加熱しても変化しないが、リン酸塩や炭酸塩を用いて弱アルカリ性条件で加熱すると3-カフェオイルキナ酸および4-カフェオイルキナ酸への異性化が起こり、これら3種の異性体がほぼ等モル比になったところで定常状態となった。クロロゲン酸の異性体については特有の機能性も報告されており、ジャガイモ等の急速加熱やクロロゲン酸標品の弱アルカリ条件下の加熱によって有用な異性体を製造できることが確認された。
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