研究概要 |
低密度リポタンパク(LDL)レセプターファミリーの一員であるLDL receptor related Protein 5(LRP5)ならびにWntシグナリングはショウジョウバエからヒトまで普遍的に保存されているシグナル伝達機構で、初期発生での役割が主流と考えられている。しかしながらHRP5の欠損は食餌性高コレステロール血症、耐糖能異常、骨粗しよう症などの代謝異常症を引き起こす。従って定常状態ではLRP5は脂質やグルコース、カルシウムなどのホメオスタシスを担うと考えられる。このようにLRP5は生体における種々の代謝のレギュレーターであることが示されているが、LRP5/Wntシグナリング系の成体における調節メカニズムは依然として不明である。 糖尿病や動脈硬化症といった生活習慣病とLRP5/Wntシグナリングの関係で、我々が最も注目している分子であるHr5とそのファミリーであるHP6については全長発現プラスミドの他、ドミナントネガティブ発現プラスミドを構築した(マウスLRP5N1, マウスLRP6N1)。ドミナントネガティブは細胞膜にアンカーされずに細胞外に分泌されるように膜貫通ドメイン以降のC末側を欠損し、C末端に検出および精製のためのmyc-Hisタグを導入した構造を持つ。これらの発現プラスミドを293細胞に導入して薬剤選択を経た後、高発現株のクローニングを行い安定発現細胞株を樹立した。LRP5N1、LRP6N1それぞれの安定発現細胞の無血清コンディションドメディウムより目的タンパクの精製を試み、ニッケルカラムによるアフィニティ精製のほか、イオン交換クロマトグラフィー、疎水結合クロマトグラフィーを組み合わせることにより、ほぼシングルバンドである精製標品を得ることが出来る精製系を確立した。
|