必須脂肪酸バランスはエイコサノイドの生理活性を変化させ、アレルギーや炎症、細胞増殖などを調節する。一方で、ドコサヘキサエン酸(DHA)などのn-3系列多価不飽和脂肪酸は、ある種の転写因子の活性を調節することで、細胞の分化を制御することが明らかとなった。昨年度までの研究で、DHAはマウス由来3T3-L1細胞の脂肪細胞への分化を抑制し、ラット由来L6細胞の筋細胞への分化を促進することが分かった。本年度は、同じ間葉系間細胞から分化する骨芽細胞の分化に及ぼす影響を解析したところ、マウス由来MC3T3-E1細胞の骨芽細胞への分化を顕著に促進することが明らかとなった。現在、これらの生理作用に必要な脂肪酸結合タンパク質や転写因子などの発現を解析中である。また、これらのDHAの効果を個体レベルで証明するために、ICR系雄性マウスにDHAの豊富な魚油を与えて、効果を検証した。魚油投与群は牛脂や他の植物油投与群と比較して、内臓脂肪量が有意に低下しており、生活習慣病予防に有効なことが示された。その他の生化学的指標は現在解析中である。 これらの成果を食生活に役立てるために、市販の脂肪酸を含有する健康食品・サプリメントの必須脂肪酸バランスの検証を行った。店頭やインターネット上で関連商品を検索すると、日本で販売されているも1のだけでも約200種類もの数があり、これらはカプセル型、飲料型、食用油型、通常食品型の4つに分類することができた。特徴的なもの37種類を分析しだところ、通常食品型にはリノール酸の含量が高いものがあり、必須脂肪酸バランスに問題が有る商品も見られた。
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