鉄欠乏性貧血は世界中で頻発している栄養失調である。これまで鉄欠乏性貧血の治療につながる体内に吸収されやすい鉄素材や鉄化合物が数多く報告されてきたが、食事中に鉄と共存する栄養素が及ぼす影響についての研究は少ない.そこで本研究では、鉄と同時に摂取する三大栄養素が鉄の吸収と利用に対する影響について解明することを目的とした。平成20年度は、鉄欠乏性貧血回復期における卵タンパク質の影響について検討した。 1.鉄欠乏性貧血回復期における卵黄タンパク質の影響に関する研究 4週齢SD系雌性ラットに3週間鉄無添加食を与えた後、20%カゼイン食(DC群)、卵白食群(EW群)、卵黄添加カゼイン食(EY群)を3週間与え貧血回復の程度を比較検討した。また6週間20%カゼイン食を与えた群をコントロール(C群)とした。その結果、DEW群およびDA群はDEY群に比べ、血液生化学検査値の変動では鉄欠乏性貧血の回復が良好であり、肝臓鉄濃度が有為に高値であった。このことから、鉄欠乏性貧血回復期には卵白タンパク質が卵黄タンパク質よりも有用であることが示唆された。 2.鉄欠乏性貧血回復期における卵白構成タンパク質の有用性に関する研究 4過齢SD系雌性ラットに3週間鉄無添加食を与えた後、20%カゼイン食(DC群)、卵白食群(EW群)、オボアルブミン食(A群)を3週間与え貧血回復の程度を比較検討した。また6週間20%カゼイン食を与えた群をコントロール(C群)とした.その結果、EW群とDA群は貧血回復期の血液生化学検査値および肝臓鉄濃度に有意な差がなく同様に回復したことから、卵白タンパク質の有用成分はオボアルブミンであることが推察された。
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