AMPK(AMP activated kinase)はAMPを基質とするキナーゼで、生体内エネルギー代謝に深く関わる。レプチン作用がAMPK活性を介することや、肥満および糖尿病発症モデルでは、摂食中枢や骨格筋でのAMPK活性が変化しており、エネルギー代謝の異常に拍車をかけていることが示唆されている。本研究では、AMPの経口摂取がAMPK活性の増強やエネルギー代謝異常の改善に有効であるか、またAMPの栄養生理物質としての可能性について、血液成分およびAMPK活性の解析を行った。 5%Glucose液および5、10、15%のAMPを添加したGlucose/AMP混液をゾンデでマウスに投与し(0.5ml/匹)、5、10、15、30分から150分後まで30分毎にエーテル麻酔下で心採血および肝臓、膵臓、小腸、骨格筋、腹腔脂肪を採取し、分析に用いた。 血糖に対するAMP濃度の検討の結果AMP10%液投与群において投与後15分から有意に血糖上昇抑制され15%液との差が見られなかったことから他の解析は10%液投与群についてのみ行った。血中インスリン濃度は投与後5分では差はなかった。AMP群ではその後コントロール群のような急激な上昇はみられず、緩やかな低下を示した。血中中性脂肪は両群に違いが認められなかったが、遊離脂肪酸は両群とも投与から15分後にかけて低下したが、その幅はAMP群で大きく、その後の上昇も抑えたれた。以上のことからAMP経口摂取は血糖上昇および脂肪酸合成を緩やかにし、また糖の流入による脂肪分解抑制を増進し、糖尿病などの血糖、脂質コントロールが重要な疾患に有益な生理物質となりうることを示唆が示唆された。そのはたらきはインスリン作用以外、つまり骨格筋での糖吸収の増進や肝臓での解糖系、グリコーゲン合成の促進など、急速なGlucose利用に影響しているためと推測されるが、肝、筋組織におけるAMPK活性について明確な違いは認められなかった。
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