アレルギーの罹患率が増加傾向にあり、医薬品だけでなく食品成分の摂取によるアレルギー症状の改善が期待されている。マスト細胞から放出されるケミカルメディエーターの放出抑制がそのターゲットとなり得るが、ケミカルメディエーターの一つであるロイコトリエンはアレルギー症状を引き起こすだけでなく、アレルギーの慢性化において重要な役割を果たしている。そこで本研究ではマウスマスト細胞株を用いたロイコトリエン放出調節機能検定系を確立し、確立した実験系を用いて大豆イソフラボンのロイコトリエン放出調節作用を評価した。実験にはロイコトリエン高産生能を有するマウスマスト細胞株PB-3cを用いた。アラキドン酸ナトリウムを終濃度50uMとなるように添加し、48時間前培養したPB-3cが最も高いロイコトリエンB4産生能を有していた。また、PB-3cから放出されるロイコトリエン類の同定を行い、カルシウムイオノフォア刺激においてPB-3cからはロイコトリエンB4だけでなく、約40ng/1x10^6cellsのロイコトリエンC4が放出されていること、微量のロイコトリエンD4が放出されていることを明らかにした。また、ロイコトリエンE4およびF4はPB-3cから放出されていないことも明らかとなった。さらに本実験系を用いて、大豆イソフラボンのアグリコンであるダイゼインおよびゲニステインのロイコトリエンB4放出に及ぼす影響について検討したところ、50uMダイゼイン添加ではロイコトリエン放出調節活性を示さなかったのに対し、50uMゲニステイン添加ではロイコトリエンB4放出を約20%に抑制した。この結果はラット腹腔内滲出細胞を用いた実験結果と同様の傾向であり、本実験系の有用性を示すものである。
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