アレルギーの罹患率が増加傾向にあり、その対応が必要となっている。アレルギー症状の緩和には医薬品が用いられるが、長期服用しなければならないこと、副作用があることなどの理由により、その作用が比較的穏やかな食品成分の摂取によるアレルギー症状の改善が期待されている。花粉症や食物アレルギーなどのI型アレルギーは、マスト細胞表面においてアレルゲン特異的IgEとアレルゲンが架橋結合し、ヒスタミンやロイコトリエンなどのケミカルメディエーター放出されることにより発症する。従って、マスト細胞からのケミカルメディエーター放出抑制がアレルギー抑制のターゲットとなり得る。ケミカルメディエーターの一つであるロイコトリエンはアレルギー症状を引き起こすだけでなく、アレルギーの慢性化において重要な役割を果たしている。そこで本研究では昨年度確立したマウスマスト細胞株PB-3cによるロイコトリエン放出調節機能検定系を用い、大豆イソフラボン類のロイコトリエンC_4産生に及ぼす影響を検討した。その結果、終濃度50μMのゲニステインはロイコトリエンC_4産生を約15%に抑制し、ダイゼインの代謝産物であるエクオールは、終濃度5μMでロイコトリエンC_4産生を約60%に、終濃度50μMでロイコトリエンC_4産生を完全に抑制した。また、RBL-2H3細胞を用いて、大豆イソフラボン類のヒスタミン放出に及ぼす影響を検討したが、大豆イソフラボン類は顕著なヒスタミン放出調節作用を示さなかった。この結果から、大豆イソフラボン類はマスト細胞へのカルシウムイオン流入の抑制ではなく、ERKのリン酸化、もしくはホスフォリバーゼA_2活性、5-リポキシゲナーゼ活性の抑制を介してロイコトリエンの放出を抑制していると考えられた。
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