花粉症や食物アレルギーなどのI型アレルギーは、マスト細胞表面においてアレルゲン特異的IgEとアレルゲンが架橋結合して細胞内カルシウムイオン濃度が上昇し、ヒスタミンやロイコトリエンなどのケミカルメディエーターが放出されることにより発症する。従って、マスト細胞からのケミカルメディエーター放出抑制がアレルギー抑制のターゲットとなり得る。また、ケミカルメディエーターの一つであるロイコトリエンは、アレルギー症状を引き起こすだけでなく、アレルギーの慢性化において重要な役割を果たしている。本研究課題で確立したマウスマスト細胞株PB-3cを用いたロイコトリエン放出調節機能検定系により、大豆イソフラボンアグリコンであるゲニステイン、ダイゼインの代謝産物であるエクオールが濃度依存的にPB-3cからのロイコトリエン放出を抑制することを見出した。そこで、ゲニステインおよびエクオールのロイコトリエン放出抑制メカニズムを解明するために、ゲニステインおよびエクオール存在下でカルシウムイオノフォアA23187でPB-3cを刺激した場合の細胞内カルシウムイオン濃度の変化を測定した。その結果、ゲニステインは、カルシウムイオノフォアA23187刺激による細胞内カルシウムイオン濃度の上昇に全く影響を及ぼさなかったのに対し、エクオールは細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を抑制する傾向が認められた。この結果より、エクオールのロイコトリエン放出抑制作用のメカニズムの一つとして、カルシウムイオンチャネルとの相互作用などによる細胞内カルシウムイオン濃度上昇の抑制が考えられ、ゲニステインはその他のメカニズムが関与していることが示唆された。また、ゲニステインとエクオールではロイコトリエン放出抑制メカニズムが異なると考えられる。
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