メタボリックシンドロームとは、肥満に高血糖・高血圧・脂質異常症のうち2つ以上を合併した状態であり、その成因は様々な要因が重なり合っているが、食事による影響がかなり大きいと考えられている。そこで、本研究ではメタボリックシンドロームの予防と治療に寄与できる海苔由来成分を検索することを目的として研究を行った。まず本年度は、海苔成分の抗糖尿病効果を実験動物で確認するとともに海苔成分中に含まれるインスリン様作用物質の解明を進めた。これまでにインスリン様作用を確認できた成分をさらに大まかな分子量に分けて測定した結果、分子量1000以下の画分に最も強い作用を認めることができた。そこで、Wistar系雄性ラットに糖負荷試験を行い、経時的に採血して血糖値を測定した。その結果、その画分を投与した群で有意に低い値を示した。さらに、ストレプトゾトシン誘発糖尿病モデルラットを用いて、糖負荷試験を行ったところ、分子量1000以下の画分を投与した群で同様に有意に低値を示した。現在、遺伝的に高血糖と高インスリン血症を呈し、II型糖尿病のモデル動物として用いられているKK-Ayマウスにこの画分を長期投与して、糖尿病改善効果を示すかどうか検討している。さらに本年度は、この画分に含有する作用物質を明らかにする為に、物質同定ならびに分画をすすめながら作用を確認した。この画分には、ペプチドの他にも糖や色素などを含有する可能性があり、ペプチド以外の成分の影響を取り除く為に加熱処理を行った。その結果、加熱処理によってもインスリン様作用は大きく阻害されるものではなかったことから、作用物質はペプチドである可能性が高いことが明らかとなった。現在陸上植物由来のペプチドに、インスリン様作用を示すことが報告されている。従って、作用成分の同定についても今後進める予定である。
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