本研究は、東南アジアの伝統発酵食品から穀類(米、小麦、蕎麦)由来のアレルゲンタンパク質を特異的に分解する微生物を検索し、その分離微生物を用いた食品工業への応用を検討することを目的とした。平成19年度は、タイ、ベトナム、カンボジアの発酵食品を対象に、プロテアーゼ産生微生物のスクリーニングを行った。供試菌株は、各食品から分離した計86株とし、これらの菌株をNA、LB液体培地及びコラゲナーゼ誘導培地で培養(37℃、48時間)した培養上清を粗酵素溶液として用いた。また、米、小麦、蕎麦から抽出したタンパク質に、粗酵素溶液を作用させた時の分子量の変化を、SDS-PAGEにより観察することで、供試菌株の穀類タンパク質分解能を検討した。米抽出タンパク質に粗酵素溶液を作用させた時、分子量に変化がみられたのは35株であった。そのうち21株では26kDa付近のバンドが消失し、14株では26kDaに加え14-16kDa付近のバンドの減少が見られた。分子量の変化が認められたいずれのタンパク質も、6.5kDa以下に新たなバンドの出現が確認され、米タンパク質を分解する35株を特定することができた。しかし、小麦、蕎麦抽出タンパク質においては、いずれの粗酵素溶液を作用させた時も分子量に変化がみられず、粗酵素溶液の調製方法、培養条件を含めて、今後、検討する必要がある。次年度は、供試菌株の系統解析を行うと共にアレルゲンタンパク質分解能を明らかにしていきたい。
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