平成19年度研究で、胃切除後患者は食事量や食事内容の具体的な目安や方法に関する情報を必要としており、胃切除後症候群の予防には「食事形態」、「食事量」、「切除範囲による食事の進め方」、「食品構成の提示」、「必要エネルギー量」も含めた、患者個々に合わせた食事の食べ方や食品の選び方、食事量を中心に栄養指導を展開することが必要であることが分かった。そこで20年度は、胃切除後患者を対象とした一般書籍を取り上げその内容を検討するとともに、19年度結果を基に栄養指導媒体として患者向けパンフレットを作成した。一般書籍は主にレシピ集としての要素が強く、料理献立の提示はあるものの、栄養素に関しては、食事量は徐々に元の状態に戻す、栄養が不足しないように、タンパク質、ビタミン、糖質は十分に、といった抽象的な説明が目立ち、適正なエネルギー量や食品構成に踏み込んで説明されているものは見られなかった。本研究者が作成した「胃を切除した方へ胃切除後症候群と食事の話し」というパンフレットは、胃切除後の合併症を予防して良好な予後を保つために、起こりうる合併症のリスクと食事や栄養との関係について、適切な情報提供することを目的とした。内容は、主な消化器の働き、胃の構造と機能、胃の切除について、胃切除後の食事の進め方、胃切除後の後遺症、食事療法について、説明した。特に、「術後どのぐらいの期間で、何が食べられるようになるのか」という食事の進め方の目安を必要としている患者は多いため、その目安表を取り入れるとともに、適正なエネルギー必要量の求め方や一日の食事量の目安として食品構成を示し、栄養状態の回復のため、少量でも十分な栄養摂取を説明することに配慮した。また、退院直後は患者自身が体調を庇護して、食べることに慎重になることで、栄養不良状態に陥る場合もあることから、その点についての注意も説明するものとした。
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