これまでの研究により、緑茶の代表的なアミノ酸であるテアニンには、脳卒中易発症性高血圧自然発症ラットへの長期投与で脳卒中発症遅延による寿命の延長と脳障害保護作用があり、実験的脳梗塞による神経細胞死や脳傷害を抑制することが明らかとなっている。しかしながら、その詳細な機構は明らかとなっていない。昨年度までの結果から、実験的脳梗塞を起こしたラットで障害が起こりやすい部位「海馬」における脳間隙中成分-特に神経伝達物質の一つであるドーパミンの放出パターンに、テアニンの投与や摂取が影響を及ぼすことを、脳微少透析法(Brain Microdialysis)を用いて検討し、ドーパミン放出が一過性に増加することを明らかにした。 本年度は、テアニン摂取と脳傷害保護作用との関連を明確にする目的で、Wistar系雄ラットを用い、テアニン混餌飼料またはテアニン水溶液を摂取したテアニン群と、カゼイン飼料または蒸留水を摂取した対照群に、両側総頸動脈閉塞(2VO)を施し、一過性の脳虚血を起こした後再還流させた際に起こる認知機能の低下に対する記憶学習機能に対する作用を検討した。記憶学習試験としては、Morris水迷路試験(Morris Water Maze Test)および受動回避試験(Passive Avoidance Test)を行った。その結果、Morris水迷路試験では、対照群と比較してプローブテストにおける有意な差は見られなかった。また受動回避試験においては、テアニン摂取により、記憶保持時間が延長する傾向が観察された。
|