必須脂肪酸はリノール酸(LA、18 : 2m-6)、a-リノレン酸(ALA、18 : 3n-3)があり、これらは動物体内に取り込まれると、LAはアラキドン酸(AA、20 : 4n-6)に、ALAはエイコサペンタエン酸(EPA、20 : 5n-3)、ドコサヘキサエン酸(DHA、22 : 6m-6)に変換される。脳神経系は他の臓器、組織と比べてDHA含量が高く、重要な機能を担っていると考えられている。 雄性ICRマウス(5週齢)に5%のベニバナ油(High-LA)或いはシソ油(High-ALA)を添加した精製飼料を4週間与えた。脳(大脳皮質、線条体、海馬)の総脂質画分の脂肪酸組成をガスクロマトグラフを用いて測定した。大脳皮質のDHAはHigh-LA群では15.4%であるのに対しHigh-ALA群では18.4%と有意に高かった。線条体のDHAはHigh-LA群では11.3%であるのに対しHigh-ALA群では16.7%と有意に高かった。海馬のDHAはHigh-LA群では13.2%であるのに対しHigh-ALA群では15.8%で有意ではないがHigh-ALA群が高い傾向が見られた。 大脳皮質、線条体、海馬のBDNF量を測定したところ、大脳皮質では両群間に有意差は見られなかった。線条体ではHigh-LA群に対し、High-ALA群で有意に高かった。海馬においては両群間に有意差はないもののHigh-ALA群が高い傾向が見られた。 今回のように給餌期間が4ヶ月と短い場合、脂肪酸組成の変化は脳の領域において異なることが明らかとなった。今回の研究でもn-3系列脂肪酸が欠乏食で線条体のBDNF含量に低下していることから必須脂肪酸のn-6/n-3バランスが脳機能に影響を与えるメカニズムとしてBDNFが関与している可能性が示唆された。
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