研究概要 |
クリプトスポリジウム、ジアルジア等の食水系原虫感染症は、公衆衛生学・食品衛生学的にも重要性が高いにも拘らず、感染・汚染源となる動物種、さらに人を含めた宿主体内での侵入過程は未だ不明である。申請者は、これらの基礎データを得るため、(1)汚染源を特定するための野外での家畜の疫学調査、(2)侵入型虫体の微細構造の解析を実施した。(1)の結果、1例の牛からC. andersoniが検出され、18SrRNAgene領域で2種の混合株(GenBank Accession No.AB362934)であることが判明した。また、諸外国で報告ざれている株とは異なり、マウスヘの感染性を有し、既存の株とは生物学的性状が異なることが判明した。(2) C. parvumの侵入型虫体の微細構造を解析した結果、スポロゾイトの先端に3つのapical rings,直下にelectron dense collar、および後端へと延びる2本central microtubules が観察された。Subpellicular microtubulesは無く、スポロゾイト全体の膜間にlongitudinal ridgesが観察された。抗α-tubulinを用いた免疫電顕では、これらの細胞骨格が反応し、オーシスト可溶化抗原を用いたウエスタンブロッテインクでは、α-tubulinと推測される分子量約50-TkDa (pl 6,24)の抗原が検出された。このことから、宿主細胞の上皮のみに感染し、増殖するクリプトスポリジウムは、他の原虫種の侵入型虫体とは異なる骨格構造を持つことが判明した。今後は、(1)については、対象を全国規裸に広げ、分子生物学的疫学調査を実施し、(2)については、さらに侵入に係る物質等を同定し、その評価を進めていく予定である。
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