公衆衛生学・食品衛生学的にも重要度の高いクリプトスポリジウム、ジアルジア等の食水系原虫感染症について、我が国における感染分布、さらにこれらの感染機序を解明するため、以下の解析を行った。(1)環境中への汚染源として、特に感染後、糞便中に大量に原虫を排出する家畜(牛、豚)を対象に調査を実施した。検出された原虫について、遺伝子解析により種・遺伝子型を同定し、感染宿主域を分析評価した。(2)宿主に摂取されたクリプトスポリジウム原虫が、どのように宿主細胞に侵入し、増殖するかを解明するため、これまでにも多くの感染者が報告されているCryptosporidium parvumをターゲットに、その関連タンパク質の同定を試みた。(1)の結果、21都道府県の成牛205頭中、7都道府県12頭(5.9%)から、Cryptosporidiumが検出された。8都道府県の成豚129頭からは、本原虫は検出されなかった。その後の解析から、牛から検出された全株はC. andersoni novel typeであることが分かった。以上より、我が国の牛において、Cryptosporidium感染は広く分布していることが判明した。(2)の解析では、特異モノクローナル抗体を用いた試験により、Cryptosporidiumと同じアピカルコンプレックス門に属するEimeriaの侵入型において、宿主細胞への侵入に関わるmicronemeタンパク質を同定した。今後は、本モノクローナル抗体を用いて、Cryptosporidiumでも、宿主細胞侵入関連タンパク質の同定を試みる予定である。
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