公衆衛生学・食品衛生学的にも重要度の高いクリプトスポリジウム、ジアルジア等の食水系原虫感染症について、ヒトへの感染リスクを評価すべく、家畜における感染分布、さらにこれら原虫の感染機序を解明するため、以下の解析を行った。(1)家畜、特に感染後、糞便中に大量に原虫を排出するウシ、ブタを対象に糞便調査を実施した。検出された原虫について、遺伝子解析により種・遺伝子型を同定し、感染宿主域を評価した。また、その他に検出された虫体から飼育環境の評価を行った。(2)宿主に摂取されたクリプトスポリジウム原虫がいかに宿主細胞に侵入し、増殖するかを解明するため、これまでにも多くの感染者が報告されているCryptosporidium parvum侵入型虫体を対象に、生物学的性状を解析した。(1)の結果、成牛213頭、6カ月齢のブタ129頭での調査の結果、ウシでのみクリプトスポリジウム(C. andersoni)が検出されたが、同じコクシジウムであるEimeria原虫が両動物において今なお高率に感染していることが示された。また、糞便・環境由来感染となるEimeria原虫に加え、回虫、鞭中、毛細線虫が検出されたことから、飼育環境改善の必要性が示唆された。(2)の解析では、小腸の宿主細胞に感染する侵入型虫体は、脱嚢後速やかに死滅するこが判明し、腸管内では即時に宿主細胞へと侵入することが示唆された。また、電子顕微鏡観察による死滅段階の虫体の詳細な解析により、in vitroでの無細胞培養後のメロゾイトと報告されている形態は、死滅段階虫体の可能性があることが判明した。その可否について議論されている本手法により、in vitroで増殖させたC. parvumについて、詳細な形態解析の可能性が示唆された。
|