研究概要 |
情報化社会の進展などの社会的背景から,小学校・中学校は平成14年度から,また,高等学校は平成15年度入学者から,新しい学習指導要領に基づく情報教育を取り入れた教育課程が実施されるようになった。大学関係者の間でも,入学段階までに,情報に関する基本的なことを学んだ学生が入学してくると,とても高い期待が為されていた。だが実態は,期待通りのものではなかった。 そこで,大学入学者に対し,高等学校普通科情報の履修状況に関するアンケートを行った。その結果,平成18年度入学者の約40%は,全く情報の授業を履修してきていないことがわかった。平成18年度中に履修漏れ等がメディア等で指摘されたこともあり,平成19年度入学者で,情報の履修時間が0時間であった学生は5%未満となった。また,履修時間が1時間〜20時間以内の学生は,平成18年度には25%いたが,平成19年度には10%となり,全体として履修漏れの状況は改善してきていると推察される。だが,まだまだ相対的な時間は不足しており,加えて,学習指導要領に即した指導が行われていない問題点が指摘された。 また、知っているようで知らない事柄に関する情報モラル認識テストを行い,正答・誤答の分析を行った。その結果,画像入りのメール,フィッシング詐欺の疑いのあるメール,オークション詐欺やワンクリック詐欺の疑いのあるメールが届いた場合の対処法が十分でない学生が4割から5割いることがわかった。いずれも,Cookie による情報漏洩の危険もある内容である。フィッシング詐欺などの言葉の意味は知っている学生であるが,対処法が十分でないことがわかり,危険の度合いや具体的対策を示した実践的な指導が必要であることが示唆された。
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