19年度は、アクションリサーチとして、自治体の総合計画策定に向けた大学公開講座を(1)鹿児島県垂水市の中堅職員対象、および、(2)若手職員対象にそれぞれ計9回、(3)同市民対象の公開講座を計20回通年開講した。また、過疎地域指定を受ける市町村に共通する持続可能な開発の問題と自治体計画との関係分析をするための調査準備を行った。以上を通じて、本年度仮説的に明らかになってきた点として下記の内容が挙げられる。 農山漁村・過疎地域における持続不可能な問題を特定し、その課題の構造認識を学習者が獲得していくためには、次にあげる複眼的な視点による学習内容の編成が有効であることが明らかになりつつある。(1)統計から見えてくる地域の客観的位置・課題、(2)統計からは見えてこない隠れた地域課題、(3)課題と課題をつなぐ視点(システム思考)、(4)地域を取り巻く世界や国内の動向、特にグローバリゼーションの視点である。 学習の内容・方法としては、地域における矛盾や課題に気づいていけるための隣接分野を横断する体系的な学習が、学問的知見の獲得と同時に、多様な他者(市民と行政職員の関係を含む)との対話を重視して進めることが、課題解決の主体者意識の醸成にとって重要であることが見えてきている。 学習課題としては、次に挙げる3点が導きだされつつある。一つは、行政内部の関係として、計画と予算の分断、二つが、行政施策と住民ニーズの分断、三つが、住民自身(あるいは、コミュニティ)の問題として、生産手段と生活手段の分離、および、土地と労働の分離に由来する自己疎外の問題が、コミュニティの衰退、行政への無関心、環境問題などの根底に横たわっているという点である。 本年度研究経過については、日本環境教育学会と日本社会教育学会において発表を行い、現在論文を準備中である。
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