20年度は、昨年実施した総合計画策定公開講座の内容分析、及び、昨年度の課題(課題解決の主体者意識の醸成)を引き継いだ公開講座を(1)地元学と地域づくり、(2)垂水の町づくりとESDゼミナール、(3)総合計画と行政改革ゼミナール、(4)ファシリテーション研修を主に市役所職員向けに開講した。 公開講座の内容分析は、市民向けに実施した12回の講座(4領域×3テーマ : (1)よい仕事環境づくり(産業)、(2)よい自然と居住環境づくり(環境)、(3)よい学び/仲間/文化づくり(生活文化)、(4)よい行政と住民参加づくり(政治))について、専門家の問題提起内容(客観的な地域課題認識)と住民側の討論結果(間主観的地域課題認識)の両側面から分析し、両者の関係性について検討を行った。 本研究は、農山漁村・過疎地域の再生を「垂水市に暮らす住民自らが、垂水という地域の個性を自覚し、その個性を大切にしながら、よい環境を整え、よい仕事を生み出し、その地域の暮らしを楽しむ生活文化を創造しつづける連続行為」と位置づけており、前述の4領域から地域課題とその認識主体の問題を検討したことに特徴がある。 その結果、(1)客観的地域課題と間主観的地域課題の間には、隔たりがあること(講師が提供する専門的知見が、必ずしも理解されていない)、(2)専門家の知見を取り込むことで、住民同士で地域課題の共有化を進め、当事者意識を高めていける可能性があること、(3)4領域は、それぞれ課題の性質や段階が異なるため、個々の対応が必要であることが明らかになった。 一方、専門家の問題提起に基づき、住民同士が討論する「問題提起型」公開講座の効果とその限界も今回の考察で明らかになった。本年度実施した公開講座は、地元学やゼミ形式の手法を導入することで、学習の目的、内容、方法等の企画を市職員側に委ね、学習を組織する主体への移行を試みた。その成果と意義の検証は、今後の課題である。
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