昨年度の調査で明らかとなった共通コンテンツの条件である(1)実物資料に限定されない広い情報提供(2)地域ごとの情報提供(3)更新される新しい情報の提供(4)主体的に情報を探索する仕組み(5)利用者に使いやすい端末の利用を元に、博物館の展示に関連する研究成果の情報を提供する仕組みを構築した。 共通コンテンツは国立科学博物館の海棲哺乳類情報データベースを用いた。海棲哺乳類の展示は多くの博物館、動物園、水族館で行われていることと、日本各地で年間約200件の海棲哺乳類のストランディング(座礁)が記録されており、博物館や動物園、水族館がその対応に当たっていることから、上の条件(1)(2)(3)に適していると考えた。また、携帯電話は最も広く普及している携帯端末であり、(4)(5)の条件に適していると考え、携帯電話のインターネット機能を活用することとした。元々はインターネット上で検索するように設計されていたデータベースを携帯電話のインターネット経由でも閲覧できるようにしたため、ウェブブラウザを搭載した端末であれば利用が可能な仕組みへと発展した。 都道府県ごとに記録されたストランディング情報を閲覧でき、日本各地の展示施設において利用可能という利点を生かすため、九州大学ユーザーサイエンス機構が開発した巡回展「クジラとぼくらの物語」において福岡、大阪を始め全国6会場で情報提供を試行し「身近な地域の情報が得られる」「ストランディングヘの理解が深まる」という効果が確認された。この仕組みは引き続き巡回展で用いられる他、各地の水族館等での利用を計画している。また、国立科学博物館の展示室では、携帯電話の新機能であるワンセグを用い、ストランディング時の映像や、座礁した個体が展示標本になるまでの映像をあわせて提供し、携帯電話を使って自分の興味に応じて、より詳細な情報を取り出せ、個々の学習意欲に対応した情報提供の利点があることが明らかとなった。
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