研究概要 |
初年度である当年度は,第一に,各国研究評価制度の調査と当該テーマに関連する理論的な先行研究のレビュー,ならびに,研究実施者がHI7年末に実施した大学教員を対象としたアンケート調査の再分析を行った。海外では近年,英国REF,オーストラリアRQFなど研究評価制度は急激に変化している。その状況について詳細に調査を行うとともに,そのような変遷がなぜ生じているかについて先行研究を踏まえて検討を行った。そこでは,科学のガバナンス論を背景とする政府と大学との契約モデルの変化,プリンシパル・エージェントモデルを背景とする研究実施者の行為変化誘因効果,ピアレビュー手法の信頼の揺らぎと定量手法への過信が論点として浮上しており,日本においても同様の傾向が生じていることが指摘できる。また,研究者の研究生産性に各種の組織・制度的要因がどれほど影響するかを把握するため,研究者個々人を対象に実施したアンケート調査に対して共分散構造分析などの統計分析を行った。その結果,研究生産性に対して教員の研究意欲が強く影響していることに加えて,組織内での情報交流・共同行為が影響していることが明らかになり,組織的な要因が間接的な形で二次的な影響を有していることが示された。また,次年度以降の定量データ分析に備えて,既に構築しているScience Citation Index(SCI)を基にしたデータベースを最新まで拡充する作業,ならびにWeb of Scienceと併用して分析可能な体制の構築を一部行った。
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